ウェブハンドリング技術コンサルティングウェブハンドリング

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トラブル改善につながる技術情報を紹介します。

円周方向しわ(バックリング)のメカニズムと事例

スターディフェクトや菊模様などとも呼ばれる円周方向しわ の発生メカニズムについて、その本質と要因、さらに実例を挙げて解説する。

しわ はウェブの巻取方向に圧縮応力が作用し、材料力学でいう「座屈」した状態

円周方向しわ

巻取ロールのコア近傍で円周方向しわが発生した写真、および土台に立てたウェブの鉛直方向に圧縮応力を作用した状態のイメージをそれぞれ示している。このウェブが座屈するには、圧縮応力が臨界値を超える必要がある。

一方、トラブル改善の担当者と話をしていると「なぜ圧縮応力が作用するのか?」とよく質問される。ウェブは張力が負荷された状態で巻き取られる、つまり引張応力のみが作用しているはずとの考えからだろう。

 

巻き取られたウェブの長さが巻取り中に変化するために圧縮応力が誘起される

巻取り中のウェブの変化

対象ウェブが巻取りの進行によって内側に移動することを図示している。

対象ウェブが初めに巻き取られた位置を半径 r とするとウェブ長さは 2πr である。また、このときの中心に向かってウェブを押し付ける半径方向応力はゼロとみなせる。その後も対象ウェブの外層側にウェブが巻き取られていくと、ピンク矢印の半径方向応力が大きくなって対象ウェブは内側に押し込まれる。その位置を半径 r’(< r)とすれば、ウェブ長さは 2πr’ となる。

このように一旦巻き取られたウェブは、増大する半径方向応力によって巻かれている位置が内側にシフトしていき、その長さが短くなる。

図下は はじめと巻取進行後のウェブ長さ、それに対する引張/圧縮応力の関係を示している。
①はじめの位置では、ウェブは張力起因の引張応力が青矢印の方向に負荷された状態にある
②巻取進行後、内側に押し込まれると圧縮されて長さが短くなり、引張応力とは反対方向に赤矢印の圧縮応力が生じる
③はじめの引張応力よりも圧縮応力が大きくなると、ウェブには圧縮応力が作用する

 

ウェブは圧縮応力が臨界値を超えると座屈して しわ になるわけではない

ウェブの変形スペース

図左に示すように、ウェブの両側(巻取ロールでは表裏)には同じようにウェブがあり、それぞれが支えあっている。そのため、圧縮応力が座屈の臨界値を超えても簡単には しわ は発生しない。しわ が発生するには、座屈できるスペースが必要になる。図右のように巻取ロール内の空気によってウェブ間が十分離れている、あるいはコア表面での巻き始めの段差の隙間などがそれに該当する。

 

  1. はじめは巻取張力による引張応力が負荷された状態で巻き取られる
  2. 巻取りが進むことによって内側に移動する
  3. 内側への移動による圧縮応力が巻取張力の引張応力よりも大きくなると、結果として圧縮応力が作用した状態になる
  4. 座屈の臨界値を超え、かつ動けるスペースがあると しわ が発生する

 

ロール端面で確認されるコアから放射状のしわ

事例①

スターディフェクトは、過大な半径方向応力によって内層側のウェブがコアと共に内側に押し込まれた結果である。

図右にはコアの外径に相当する赤線の円弧、および原因として着目する部分である青点線枠をそれぞれ記載している。青点線枠内の赤線と実際のコア外周の位置を見比べると、僅かにコアが押し込まれていることが分かる。この部分がウェブの動けるスペースであり、スターディフェクトの起点となっている。

 

巻取ロールからはみ出ている部分での波状しわ

事例②

写真の場合、コアから幅方向ではみ出ている部分のウェブはその内側に支えがない。この内側が動けるスペースとなり、ウェブが座屈して波状に変形している。

図右は巻取ロールを幅方向に半分に割った断面を示している。着目すべきは赤丸のスペースであり、端面不揃いでその内側に支えが無い部分である。このようなロール端面位置で波状のしわが発生する場合もある。

 

「トラブルが発生した実物の観察」が重要

紹介した事例から分かるように、巻取トラブルが発生した実物を観察するだけでも原因につながる情報が得られる。ウェブが動けるスペースがどこにあるのか、これが円周方向しわ(バックリング)の改善において重要なポイントになる。

 

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