張力と空気膜を制する者はウェブハンドリングを制する。この真意を紹介する。
生産プロセスにおける張力の役割
生産装置を使いこなすための調整パラメータ
ロールtoロール方式の生産プロセスの一つである塗工プロセスでは、ウェブに機能層を付与する塗工装置が用いられる。この装置は繰出、塗工、乾燥、厚みや欠点の検査、ウェブの蓄積(アキュームレート)、巻取といった複数の工程で構成される。他にもプラスチックフィルムや紙、金属箔の生産プロセスがあり、いずれの生産装置も複数工程の構成である。
生産装置の工程ごとに適した張力に設定して搬送されるウェブや最終的に巻き取られるロールにトラブルを発生させないことが肝心であり、ウェブ製品ごとにその物性や要求品質にあわせる必要もある。つまり張力は生産装置を使いこなすための調整パラメータといえる。
トラブルに対する張力と空気膜の関係
ウェブ搬送のトラクションと巻取ロールの内部応力に大きな影響をあたえるパラメータ
図はウェブハンドリングにおけるトラブルと張力の関係を示している。張力設定の本質は、ウェブ搬送ではウェブ/ガイドロール間の接触に関わる「トラクション」、巻取りでは巻取ロールの「内部応力」の調整にある。この調整が適切でないと、ウェブ搬送ではスリップ傷や しわ、巻取りではテレスコープやブロッキングといった様々なトラブルが発生する。すなわち張力はウェブハンドリングにおいて重要な役割を担っている。
さらにトラクションと内部応力には空気膜も大きく影響する。例えば生産速度を上げるとウェブ/ガイドロール間に入ってくる空気は多くなる。ウェブとガイドロールを引き離すほど空気膜が厚くなるとエアホッケーのようにウェブがガイドロール上で簡単に滑り、その結果としてスリップ傷や蛇行が発生する。巻取ロール場合も同様であり、空気膜が厚すぎるとウェブ間が簡単に滑るので軸方向にズレてテレスコープが発生する。すなわち空気膜もウェブハンドリングを考える上で重要なパラメータである。
以上より、「張力と空気膜を制する者はウェブハンドリングを制する」といっても過言ではない。
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